司馬遼太郎「峠」

mizuka082006-07-19

読み終わってからちょっと時間が経ってしまったので、感想文も薄めに…。
ちなみに、文庫本は上中下とあるのだけれども、本屋に上と下しかなかった為、中があるのを
知らずに、「あれ〜、上と下と繋がってない感じがするな〜」と思いながらちょっとだけ読んでた。
…という間抜けな話。


幕末の長岡で産まれた河井継之助という人物の話。
この本を読むまで河井継之助の事は知らなかったので勉強になった。


河井継之助は動乱期の幕末に、小さな長岡藩という藩を独立国家として確立させようと獅子奮迅した人。
幕末の物語りのスポットは大概が、薩摩長州土佐に当たるので、北の方の話が読めて面白かった。
北越戦争がそんなに激しい戦闘だったのも知らなかった。


そういう時代背景も勉強になったけど、この本で一番伝えたい所は、河井継之助の「侍」としての生き方。
時代の先端を見据えつつも「侍」という美しい生き方にこだわった継之助がカッコよく見える。
(当時の領民からは激しい反感も買っていたらしいけど…)
継之助のどこまでも筋を通して、志しを高く、美しく生きていく生き方は「武士道」という言葉を
思い出すし、そういう日本固有の美しいものは忘れてはいけないな〜…と思わせてくれる。


 「よろしく公論を百年の後にまって玉砕せんのみ」という。いずれが正しいか、その議論がおちつくのは百年のちでなければならない。
歴史は百年たてば鎮まるであろう。その百年の後世に正邪の判断をまかせるべきである、というのが東洋の価値観であった。
その百年のちの理解をまって、いまはただ玉砕せんのみ、というのである。全藩戦死することによってその正義がどこにあるかを後世にしらしめたいという。」(司馬遼太郎「峠」より)


私が幕末をこよなく愛するのはその部分。
戦国時代はまだそういう精神は確立されていない。
確かに群雄割拠の野性的な英雄譚も面白いけど、私はどうしても精神論の入った幕末が好き。